2019年6月21日金曜日

太宰治「人間失格」

長年、ずぅーーーと書けなかった人間失格の書評。
どう書いたところで自分をさらけすぎて嫌になる。
思案して思案してようやく書けた。
以下、アマゾンの書評に投稿したまま。

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【人間とはかくも哀れな・・・】

喫茶店のママのセリフ、
「葉ちゃんは・・・神様みたいないい子でした」
これに尽きる。このセリフによって読者は人間社会の泥沼を思い知らされる。

この小説の主人公である大庭葉蔵には、
どうやら人間特有の欲望というものが欠けているようだ。
そんな自己中心的な心を持たない葉蔵が、
女性から神の子のように見えても不思議ではない。

では葉蔵が神の子なら、葉蔵以外の人間はいったいなんだろうか?
人間を失格した葉蔵が神の子なら、人間を合格した人間は?
その答えは誠に恐ろしい。

太宰治はとんでもない才能をもった作家ではあるが、
その筆は必ずしも安定したものではない。
しかしこの人間失格に限っては、究極の筆致である。
「末期の眼」をもった彼に何かが憑依したような別次元の作品となった。
その瞬間太宰は、川端康成が憧れ続けた「魔界」に踏み入れたに違いない。

万人にお勧めできる作品ではない。
読んで元気が出るという代物ではない。
しかし、人間、自分、社会の真の姿を知りたいと
切に願うのであれば読むべき一冊である。

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https://www.amazon.co.jp/review/R2BPSK12H0PGF7/ref=cm_cr_srp_d_rdp_perm?ie=UTF8

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ちなみに、日本で最も読まれている小説は、夏目漱石の「こころ」が1番で、太宰治の「人間失格」が2番だそうである。アマゾンの評価数も両小説は飛びぬけていて、「こころ」が688個で星4.4の評価、「人間失格」が604個の星4.4の評価でそれを裏付けている。どちらも暗い小説であるが日本人気質に合うようだ。次は「こころ」の評価を書くかな。
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