2019年5月15日水曜日

おじいさんのロボット

コンセプト:
基礎科学

タイトル:
おじいさんのロボット

備考:
絵本にしたい

以下本文:

山あいの街。

人はみな真面目に働いています。
みんな誰かの役に立つ仕事をしているのです。

その男は街のはずれに住んでいました。

仕事をしていません。
とても貧乏です。
それでも働きません。
本ばかり読んで暮らしています。

街の人たちはそんな男をバカにしていました。

ちいさな女の子だけが男のことが好きでした。
男のためにパンとかスープとかをこっそり運んでいました。

それでも男は本ばかり読んでいます。

あるとき。

男はなにかを作り始めました。
電気と金属と木を合わせてトンテンカンテン。
完成したのはロボットでした。

女の子は大喜び。
男の初めての仕事らしい仕事。

噂を耳にした街の人たちが集まってきました。
役に立たない男がいったい何をやったのか。
ロボットはとても立派でした。
ちょっとばかし期待が膨らみました。

ところが。
ロボットは奇妙な音をだすだけ。

街の人たちはがっかり。
やっぱり役立たずの男だと散々でした。
女の子だけがロボットの奇妙な音を
楽しそうに聞いていました。

それから。
男はロボットを次々作りました。

いろんな形をしたロボットでした。
でもロボットは奇妙な音をだすだけ。

あるロボットはキャタピラ。
あるロボットはタイヤ。
あるロボットは二本足。
いかにも動きそうなのに。

そうこうするうちに
男はおじいさんになり
女の子も随分大きくなりました。
おじいさんになっても男はロボットを作り続けました。
家は奇妙なロボットでうめつくされました。

ある日。
女の子が訪ねていくとおじいさんが倒れていました。
女の子に「いままでありがとう」と笑顔を残して死んでしまいました。

男は最後にロボットを一体完成させていました。
最後のロボットはひときわ大きく美しく輝いていました。
でもやはり奇妙な音をだすだけ。

街の人はやはりバカにしました。
最後まで役に立たないヤツだった。
役に立たないガラクタばかり。

女の子はおじいさんのお墓の前でシクシク泣いていました。

するとどうでしょう。
ひときわ大きなロボットが動き出したではありませんか。

大きなロボットはゆっくりゆっくりと女の子に近づきました。
女の子が振り向くとロボットはニッコリ笑いかけました。
「だいじょうぶ。おじいさんは僕のなかで生きている」
女の子はびっくり。
泣き顔で笑い返しました。

ロボットは音をだすだけではなかったのです。

おおきなロボットは女の子を肩にのせ
ゆっくりと町に向かって歩きだしました。

つられるようにしてロボットたちが動き始めました。
女の子とロボットたちはぞろぞろと街へ向かいました。
誇らしげな大行進です。

ロボットが街の角々に立ちどまりはじめました。
街の人たちはびっくり。

大きなロボットは街の中心の教会で停まりました。
女の子の目はまんまる。
いったいなにが起きるのかしら。

おおきなロボットからひときわ大きな音が響きました。
それにつられるようにしてロボットたちが次々と音を繋ぎ始めました。
音は街中を駆け巡り山に反響して素敵なメロディーとなりました。
ロボットたちの音がシンフォニーとなったのです。

この世界に音楽が発明された瞬間です。

いままで体験したことのない音が奏でる素敵な空間。
なんという心にしみる素敵な世界だろう。

もちろん一番感動したのは女の子でした。

男はすぐに役にたつことはありませんでしたが
働く街の人たちに音楽という素敵なプレゼントをしたのでした。

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