2019年1月7日月曜日

天才たちと人工知能

科学の歴史は、人類が自分自身を知る歴史です。誰かが何か発見をすると、知識がひとつ手に入ります。そのたびに人類に纏わりついていた幻想や妄想が消え去ります。時には、常識とはあまりにも違う知識を突き付けられ、社会に大きな動揺が走ることもあります。

天文学上最も重要な発見のひとつであるとされる「地動説」も、その一つです。説を提唱したコペルニクスは天文学者ですが、カトリックの司祭でもあります。宗教のど真ん中にいた人物からの提言に、なにやらクレイジーな凄みを覚えます。そのとき信じられていた既成概念に「NO」と言い切ったコペルニクスには畏敬の念しかありません。「自分たち中心」の世界観から「相対的な自分」への大転換は、多くのひとの人生観を揺さぶったことでしょう。いまや膨大なの天文データによって、宇宙の端から端までの地図が作られています。

物理学上最も重要な発見のひとつであるとされる「相対性原理」も、その一つです。アインシュタインの頭の中で熟成した驚異の仮説は神がかり的です。小さな矛盾を無視することなく突き詰め、ついには大きな常識を覆しました。時間や空間が均質で一定であるという常識は消え去り、人間は自分たちの住む世界が内包していた底抜けの深遠さを知ることになりました。その後台頭してきた量子力学も相まって人が抱く世界観は大きく揺さぶられます。それでも人類は逞しく、新しい発見を応用して社会を発展させてきました。

生物学上最も重要な発見のひとつであるとされる「DNA二重らせん」も、その一つでしょう。発見の過程がどれだけクレイジーなドロドロ劇だったとしても、その科学的価値に傷がつくことはありません。ワトソンとクリックが発表した美しい2ページの論文は科学史の金字塔です。生命の神秘さや不可思議さは消え去り、極めてシンプルで美しい定理に置き換えられました。ついに人類は、自分たち生命が何者であるかを知るに至ったのです。

もし、クレイジーな誰かが「ドラえもんのような汎用人工知能」を生みだしたとしたら。

それは人の常識をこれまで以上に大きく揺さぶることでしょう。しかし、それは自分たちが何者であるかを知る切っ掛けになるはずです。そのとき初めて人は等身大に生まれ変わるのかもしれません。

社会の枠組みに入りきらない天才たちの歴史的大発見は大きく社会を揺さぶってきました。しかし、結果的には、それらの知識はとても大切にされています。人類は転んでもただでは起きません。

真実は人を裏切りません。真実の価値は、人類にとって何よりも替えがたいのです。


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